RUDE THEATERのギターのHIROTOです。
“音を見てはいけない”。
有名プロデューサーの言葉らしいのだけど、数ヵ月前にお世話になっている方に言われて、ハッとした言葉です。
ここで言う“音を見る”とはどういうことなんだろうか。そもそも音は五感で言うところの聴覚で感じるもので、“聴く”ものであることは誰もが知っていることだと思います。
しかし、楽器を扱う身としては“音を見る”という行為は案外身近にあるんですよね。
まずはデジタルチューナー。今演奏している音階を表示する機材ですね。
次にオーディオインターフェースやコンプレッサーなどについてるレベルメーター。これは音量を視覚化している部分ですね。
そして、スペクトラムアナライザ(スペアナ)。これは横軸を周波数、縦軸を電圧(または電力)とする2次元グラフを表示する機材ですね。
細かいところを言えば、各機材のEQやゲインのコントロール部にも数値が表示されているので、“音を見る”に該当するかもしれません。
ざっとあげても音を見る機会は結構多いんですよね。
特にスペアナは、僕らもレコーディングをしていたからという要因もあり、ここ数年重宝していた機材です。
僕が考える出音を視覚化する利点は、関係者間での定量的な出音の共有です。
特に、
・聴覚的違和感の分析
・使用機材の特性把握
の2点を効率的に共有する可能性を感じたところが大きいですね。
聴覚的に感じた違和感をやみくもに調整するのではなく、一旦視覚化して調整をする過程での変化を確認したり、新しい機材のコントロール範囲を確認する作業に使うこともありました。
さて、音を聴覚的に感じたとき、周囲とその感覚を共有するにはどうしますか。
言葉に置き換えますよね。
例えば、温かい音、冷たい音、硬い音、柔らかい音。人によっては色でとらえたり、温度でとらえたり様々ですよね。
この言葉で置き換えられた音、身近な人ならその言葉でどういう音なのかある程度イメージできます。しかし、その言葉には各人のバックボーンによる影響が大きいですから、視覚化して共有することのメリットは大きいと考えていました。
無理矢理手順化すると、
①音を聴く
②言葉に置き換える
③視覚化して認識を深める
となります。
音を聴いて、「これはとても温かい音だな」と言語化する。そしてスペアナで波形を確認することで、「ふむふむ、こういう帯域がよく出ているんだな」と認識を深めるといった具合です。
この手順の中で①から②へ移る際に、つまり言語化する際に、“個人的に音を感じる”というものが必要になります。音楽をやる人として特に意識はしなくとも、これがかなり重要なところなんだと思います。言わば音に意味付けを行うような作業です。
これが的確に行われていれば、③の手順は前述通り“認識を深める”という補助的な役割を持ちます。
しかし、あまりに視覚化に注力し過ぎて、②を飛ばして①から③へ移ってしまうという事態に陥る可能性は否定できないですよね。
極論ですが、①からそのまま③へ移る動作を当たり前としてしまった場合、音を聴いて「1kHzあたりが出ている音」などと認識してしまうのは、少しもったいない気がします。
「1kHzあたりが出ている音」は音として、音色としてどうやってその楽曲の中で生きていくのだろうか。「温かい音」、「柔らかい音」とする段階があることでその音色の意味と楽曲の中での生き方が見えてくるのではないのだろうか。
これが“音を見てはいけない”という言葉の意味なんだと思いました。
“見てはいけない”という表現は少し過激ですし、もちろん用途に応じてスペアナ等の機材はこれからも使いますが、そのような事態に陥らないように僕は意識をしていく必要があるなと思います。
さらに言えば、楽曲製作はその「温かい音」という言葉である程度共有できる仲間たちで行っていると思いますし、それを感じてくれる人たちがリスナーなんだと思います。
むしろ作り手としては、音に意味付けをしてイメージを深めて楽曲を構成していくこと、それを感じさせることができるテクニック、イメージを実現し、完成させる能力の方がはるかに大切なんだと、改めて思わせていただきました。
まぁホント当たり前のことだろ?って話になってしまいましたけどね(笑)
と言うわけで、猛獣のような音を出すこの友達と仲良くなろうとする日々です。
0コメント